別役慎司のアクティングスクールは
WIAS

 

シアターゲームティーチャーやインプロティーチャーになるための養成講座もあります。

一般社団法人日本グローバル演劇教育協会(GLODEA)

TRAINER LABO トップ

マイケル・チェーホフ
MICHAEL CHEKHOV LESSONS FOR TEACHERS
マイケル・チェーホフ 教師のためのレッスン

マイケル・チェーホフ・テクニーク 教師のためのレッスン 

【INDEX】
1.Concentration 集中
2.Qualities Necessary For The Teacher 教師に必要な資質
3.The Senses; Concentration; The Joy of Movement; Gesture and Speech 感覚・集中・動きの喜び・ジェスチャーとスピーチ
4.Concentration; Teacher-Student Relationship; The Actor's Terminology; The Actor as a Creative Person; The Creative Spirit? 集中、教師と生徒の関係性、俳優の専門用語、クリエイティブな人間としての俳優、あるいはクリエイティブな精神
5.Feeling of the Whole 「全」の感
6."What"-"How"-"Who";Four Essential Abilities; Feeling of Form 「なにを」「どのように」「誰が」、4つの基本的な能力、「形」の感
7.Means for Conveying Ideas; Significance-The Pause アイディアを伝達する手段 重要性−間
8.Who-What-How; The Value of Repetition; Concentration 誰が−何を−どうやって、繰り返しの価値、集中
9.The Pause; "The Spine"-The Guiding Idea; Radiating; Feeling of the Whole 間、"背骨"となるアイディア、放射、「全」の感

レッスン1.Concentration 集中

 集中力は非常に重要です。それは、あなたの中で石や槍のようなものであるべきです。それは偉大なパワーを与えてくれるし、教師として与えるパワーになります。指導のなかでは、そのテーマについて完全に知っていないといけないし、どんな質問にも楽々答えられるようでなくてはいけません。
 集中とは近づくことでもあります。だから、生徒やモノやアイディアと通じるのです。あなたは全神経をつかって、生徒たちの集中を散漫にさせずにしなければいけません。教師は、彼らをなだめつつも、何か演技の上でまずいものがあり、俳優訓練が必要であると感じ始めるまでね粘り強く同じことを教えなければいけないでしょう。

 集中には二種類あります。これを生徒たちにいうことはとても重要です。自然に引かれる集中と、意志による集中です。興味がない対象でも、そこに集中する力が演技において必要です。

<エクササイズ>
・部屋の中の一つの対象を選びます。そのクオリティーを観察します。
・目をつぶって、その対象をはっきりと見てみましょう。
・部屋全体を観察し、どこか一部を選び、観察し、それから目をつぶってはっきりと見てみましょう。見えるものを説明してみてください。
・一つの音を選び、それのみを聞いて下さい。
・誰かが演奏している音楽のある部分だけを考えてみて下さい。
・部屋の中のある点を選んで、それを感じて、それからゲームをしながらも絶えずその点を感じ続けて下さい。
・二つの異なる物質を一つに統合し、別のものにするのをイメージしてみましょう。
・植物が生長するのをイメージしてみましょう。
・アクションをイメージし、イメージの中で逆再生させてみてください。

レッスン2.Qualities Necessary For The Teacher 教師に必要な資質

 もしあなたが教える人間であるなら、活動的でなくてはいけません。教師というのは、行動を発していかなければいけません。いつでもエネルギーを出してアクティブでいるのです。パワーを伴った言葉を発しなくてはいけません。
 教師は@活動的で、A与えて、B先生として部屋に入るのです。稽古場の敷居をまたぐときには、愛を感じながら入るのです。
 話し方としては、生徒にはゆっくりと、一人の人格ある人間として話すのです。私は、生徒がノートを取りながらのレッスンに反対です。なぜなら全人格として反応することが出来ず、脳で反応することになるからです。
 クラスはゆっくりと進め、一貫性のある明確な説明を心がけます。また、生徒たちはには注意深くあるように求めて下さい。形や色、質、質感、関係性などに。そしてもちろんあなたは自分自身に正直であって下さい。内側にはあたたかさをもって接して下さい。
 生徒たちのなかで何が起こっているのか常に感じることが最も重要です。生徒とともにいて、支えてあげるのです。また、ユーモアも時に必要です。

<準備>
・全てのエクササイズはロジカルな流れがあります。適切な順番を見つけて下さい。最初は簡単で、あとになって難しくなっていくでしょう。
・教師にとって必要な資質全てを考え、レッスンの中で出せるようにしましょう。そうやって自身を教師として成長させていきましょう。

レッスン3.The Senses; Concentration; The Joy of Movement; Gesture and Speech 感覚・集中・動きの喜び・ジェスチャーとスピーチ

感覚……視覚と聴覚に集中するように教えて下さい。他の感覚は言及しなくて構いません。

集中……集中すべき間を生徒たちに与えるなら、その間を持続させましょう。あなたが本当に集中しているならいつもより自分の身体が大きく感じるかもしれません。拡大している感覚を得るでしょう。2倍も3倍も大きく感じるとき、あなたの全存在が対象に向かっているのです。身体的な感覚であれ、想像であれ、あなたの見えない自分が動いているのです。
 集中とはなんでしょうか? 定義はしにくいものです。生徒たちにとってかなり抽象的ですから。彼らが体感し、理解する機会をたくさん作ってあげましょう。
 生徒たち全員が理解してから次に進むようにしましょう。そのために、4、5回繰り返すのもいいでしょう。理解してから次に進めるのです。これは重要です。当然、あなた自身が理解していることが絶対的条件です。
 スタニスラフスキーの悲劇は、教師とはどうあるべきかを理解していなかったということです。彼は素晴らしい発明家でしたが、教師と演出家としては才能がありませんでした。彼は自分で手本を示すことはできますが、教えることはできなかったのです。

動きの喜び……私たちは、身体的な動き(手や腕、身体を使うなど)のなかで喜びを経験するべきです。身体とその可能性への感謝と実現性がなければ、わたしたちは芸術家としてパフォーマンスすることはできません。あなたは生きているのですから、喜びの流れが体内にあるのを感じて下さい。全身で人生全てを感じて下さい。人生全てを舞台上で与えるのです。

ジェスチャーとスピーチ……指導の際はジェスチャーを使って話しましょう。とてもシンプルなジェスチャーを見つけて下さい。イギリス人は固いので話すときにジェスチャーが全然ありません。脳だけで話しているのです。ジェスチャーというのは思考を形にしたようなものです。最初わたしたちは、知り、そして忘れます。知り、そして成ります。

レッスン4.Concentration; Teacher-Student Relationship; The Actor's Terminology; The Actor as a Creative Person; The Creative Spirit? 集中、教師と生徒の関係性、俳優の専門用語、クリエイティブな人間としての俳優、クリエイティブな精神

集中……最初のエクササイズでは集中とはどういうことを意味するのかの説明であり、生徒はその理解から始まります。そして集中するとはどのような感覚かなどレッスンを通して実際に掴んでいきます。そのため、1.集中とはなにかを理解しようとする 2.集中を実際に経験しようとする という2ステップに分かれます。
 わたしたちが集中しているとき、五感全てとそれ以上を使います。例えるなら弾むような感覚や対象の重さの特別な感覚など。最初は視覚と聴覚中心に伸ばしていけばいいのですが、それはレッスンをシンプルにさせるためであり、徐々に複雑な感覚の集中も学びます。惹きつけられる魅力を持つ人は、様々な感覚を持っているものです。集中するとは何かへの最初のアプローチであり、そこから五感以上の、時には人の魂まで感じるようになります。

教師と生徒の関係性……あなたが提供するエクササイズを順番に書き出してみて下さい。テーマについて深く考えて下さい。何時間もこの作業に費やせば、結果となって現れます。
 生徒は子どもで教師は親のようなところがあります。批判に敏感になることは教師としてのパワーを失います。生徒が批判し、教師が謝罪したりすれば、もうこの関係性は崩れます。教師は存在感と自信を示さなければいけません。

俳優の専門用語……演劇では我々独自の言葉をつくりだして使ったりします。抽象的な内容を届けるとき、例えば「存在する」などを、お互いに理解し合えるようにしたいものです。独自の用語を使うことをためらう必要はありません。

クリエイティブな人間としての俳優……あなた自身がクリエイティブな人間としての感覚をもたなくてはいけません。そうなりたいと思うならすぐになれるのです。芸術の一部品であるかのように全てにチャレンジしてみましょう。ゲーテはクリエイティブなパワーに満ちていました。彼は花を見れば自分でそれを創り出したように見れたのです。

<「形」の感のエクササイズ>
なにかを作っているつもりで椅子に座ります。同じことを立ってやってみましょう。なにを作っているか形を感じることができますか? とてもシンプルなもので構いません。それが創造物と感じられるまで10回も20回もやってみましょう。思考や心で生み出されたものが、行動として誕生したのです。

人生から例を見つけるのはとても重要です。芸術的に触れることができます。ものだけでなく魂にだって触れることができるのです。また、言葉に触れることも出来ます。試しに文章を拾ってきて、その文章に触れてみましょう。同じように手やジェスチャーで表現してみましょう。また、文章を形として考えてみましょう。それを考え、喋り、動かし、感じてみましょう。

クリエイティブな精神……クリエイティブな精神のためのドアを開くことが、我々の学校で求められることです。誰もがもっているものですが、ガッチリと閉ざされています。

レッスン5.Feeling of the Whole 「全」の感

教室に入るとき、今日のテーマというものを感じています。それは、非常にエキサイティングなものです。そして、全体性というべきものを感じていなければいけません。
あなた自身のことや、あなたの専門、これから話そうとしていることや教えようとしていることに完全な自信があるでしょうか? それは、あなたの言葉や教えや振る舞いに反映されます。あなたはまた生徒や観客を感じているでしょう。そのようなクリエイティブなパワーは生徒や観客も包む雰囲気となっています。

俳優も二、三時間の公演を始めるとき、その全体像を感じていなければいけません。また、観客も俳優から与えられる全体像を感じます。教えることは、まったく同じです。
もし公演の終わりに、うまくいかなったと思っているときは、この全体の感覚がなかったのです。うまくいかないときは、あなたが砂漠にいて、相手が遙かに遠くにいるようです。また、たくさんの壁があるようです。
講義にせよ、レッスンにせよ、お芝居にせよ、全体性に辿り着くのが重要です。

レッスン6."What"-"How"-"Who";Four Essential Abilities; Feeling of Form 「なにを」「どのように」「誰が」、4つの基本的な能力、「形」の感

「集中する」という言葉をいいかえると、「掴む」「深く入る」「近づく」などの表現もできるでしょう。このように表現を変えることで伝わりやすくなることがあります。

「なにを」……生徒にエクササイズをやらせる場合、教師の教えたいことをシンプルにするためにそれがあります。だから、なにをやらせるのかが大切です。
「どのように」「誰が」……教師の「らしさ」といえばなんでしょう。イキイキとしていて、愛があり、行動的で、クリエイティブで、身体が自由で、しっかりしていて、力があり、情熱やバイタリティがある。そのような自分だと思ってください。そうなっていきます。

4つの基本的な能力……「動き(movement)」「言葉(speech)」「想像力(imagination)」「集中(concentration)」これらが生徒が伸ばしていく4つの能力です。

「形」の感……「形」の感、つまり形を感じる意識をもっていなければいけません。これがなくては教えることができません。生徒が4つの基本的能力で始めたとして、いずれ形にしていくことが求められます。形への意識が4つの能力をコントロールする助けとなるのです。

レッスン7.Means for Conveying Ideas; Significance-The Pause アイディアを伝達する手段 重要性−間

アイディアを伝達する手段……あなたがやってきたエクササイズを振り返ってみて下さい。アイディアというのは、いかに伝達するか、このためにあります。言葉とジェスチャーが一緒になる喜びの感覚をもってください。コントロールしきれない多くのことをやろうとしないでください。一つひとつの動きのあとに正しかったかの間違っていたのか尋ねてみるのです、そうすると身体からのメッセージを受け取れるようになります。
 身体と魂の調和。これだけでは充分ではありません。真実の感覚をもってください。最初は、知らなければいけません。そして忘れなければいけません。完全に直観的になるまで
もし、コントロールできないならば、成長はありません。動きをよく知り、よくコントロールしなくてはなりません。

 「花」という単語でエクササイズをしてみてください。手や腕で語り、全身で語って下さい。あなたのアイディアを伝達するのです。
 こうしたワークで、言葉を単語として話そうとするとき、伝達したいことから始めるのはよいことです。このワークを一人で、あるいは誰かとやってみてください。集中と分析を使いながら。

重要性−間……クリエイティブな方法でものに触ってみて下さい。形に対してリアルな感覚をもってください。一つひとつの動きが重要でなければいけません。

<エクササイズ>
椅子から立って、テーブルを触り、また椅子に座ります。短いポイントで、あるいは間をつくることで、一つひとつの動きを強調してください。いつでも、クリエイティブな方法で行っていることを意識してください。

レッスン8.Who-What-How; The Value of Repetition; Concentration 誰が−何を−どうやって、繰り返しの価値、集中

誰が−何を−どのように……常に頭の中に、「誰が」「何を」「どうやって」があるべきで、教えるときにとてもハッキリと理解していなくてはなりません。「さまよう」ということがないようにしてください。

繰り返しの価値……教師として、何時間もやり続けるパワーが必要です。休んだり、間を取ったりしますが、何度も何度もやり続けなければならないのです。はじめから繰り返し、新鮮な衝動で行わなければいけません。「これは前にも言ったな」と思うのではなく、同じことを何度も繰り返すのです。最初の時と同じ新鮮さで。一度体験すればいいという誘惑に負けてはいけません。

集中……わたしたちにとって集中とは特別なことです。物理的な集中だけでなく、見えない対象への集中もあります。「集中のチャート」というものを使って学びます。これは創造的でスピリチュアルな力と一体になっていくわたしたちのメソッドです。

9.The Pause; "The Spine"-The Guiding Idea; Radiating; Feeling of the Whole 間、"背骨"となるアイディア、放射、「全」の感

精神には二つの世界があり、善か悪かです。私たちの努力は善のためにあります。

……二種類の間があります。なにかが起こる前の間と、なにかが起こった後の間です。間をつくるときには、なにかを終えようとしているのか、なにかが終えたのか意識的になるべきです。直観的に適切な間がつくれるようになっていきます。なにかが起こる前か、起こったあとに間があるので、「全」 の感がなくては間の重要性を意識できません。

"背骨"となるアイディア……どうすれば「全」の感を感じられるでしょうか? 全体の中の背骨となる部分を見つけることでです。作品にせよ、スピーチにせよ、その中の背骨を見つけて、それを言葉や行動に繋げます。

放射……人生の中であなたはエネルギーを放射しています。こうしたパワーに気づいてください。全体の行動の中でも、最初と終わりを感じ、そのなかで常に放射している意識をもってください。

「全」の感……全体を感じる力と、それを実行する方法を学びます。例えば、小さな動きとスピーチでストーリーを現してください。

マイケル・チェーホフの非売品の著書「Lessons for Teachers」が、マイケル・チェーホフの国際的組織MICHAから入手しましたので、その情報をお伝えします。

WIAS 俳優養成所