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1.IMAGINATION AND INCORPORATION OF IMAGES 想像力とイメージの統合 寝る前に今日会った人や光景を思い出してみましょう。音や臭いや、そのときの気持ちも思い出せるかもしれません。そのように記憶から豊かなイメージを再現させることができます。もっと過去の事はどうでしょうか。いくらか記憶の断片になっていたり、ねじ曲がっていたりするでしょう。また、時には全く新しいイメージとなって現れることもあるでしょう。それらはCreative Imagination(創造的な想像力)なのです。 あなたが自分自身から感情を絞り出す必要がないと気づけば、すぐにそれを高く評価し始めるでしょう。そしてまた、あなたのイメージの、内部の生活の、心理(psychology)を「見る(see)」ようになれば、すぐにそれらが楽に自然と自分から生じてくるでしょう。 システマティックなトレーニングを通して、想像力は発達し、よりフレキシブルに、また機敏になります。イメージが次々に膨らんで現れてくるようになります。また形作ったり、消えたり、そのようなイメージの変化がスピーディーになります。そしてこれらの維持やコントロールには意思の力や集中力も必要です。 「なぜ、現代の、ナチュラルな芝居において、苦労してイマジネーションを使う必要があるのですか? それらのキャラクターはわかりやすく、容易に理解できます」と疑問を抱く人はいますか? チェーホフはこれに対して、こう述べています。「作家が与えてくれる作品は、彼の創造物であって、あなたのではない。ではあなたが作家の作品に対してどのように貢献すればよいのか。あなたに与えられた役は、あなたが役の深みの中から発見するべきだ。また、わかりやすくて容易に理解できる人間など一人もいない」と。 |
2.IMPROVISATIONS AND ENSEMBLE 即興とアンサンブルすべての本物の芸術家にとって、最も崇高で究極の目的は、自分自身を自由に、完璧に表現することかもしれません。われわれは、皆それぞれ自分の信念や世界観、理想、倫理的な態度をもっており、これらは深くその人の個性の根っことなっています。そしてそれらを自由に表現したいという願望があります。芸術家は、内なる信念を自分自身をツールとして表現します。そして、それらは例外なく、自由な即興(improvisation)から為し得るのです。 俳優が単に台詞を喋り、演出家からの命令を実行するだけなら、他人の創造の奴隷となるだけで、即興的な働きはできません。どんな役も、即興の機会があり、俳優と演出家でコラボレートし、共に創り上げていくものなのです。 ただ、本当に素晴らしい表現と役作りを達成するには、多くの様々な創造的アプローチが必要です。全体としての役の解釈を非常に細かい特徴として内包していないといけませんし、使い古された陳腐な方法は捨て、自分自身のためだけに演じるという考えも捨てておかないと始まりません。そして、舞台上で、自分自身が変化する純粋な喜びを感じない俳優は、本物の、創造的な即興にはほとんど縁がないでしょう。 また、即興というのは、俳優の能力をアップさせもします。自由な感覚を楽しめるようになると、内面でもよりリッチになるのを感じるでしょう。 |
3.THE ATMOSPHERE AND INDIVIDUAL FEELINGS アトモスフィアと個人の感覚舞台は、目に見え、耳に聞こえるもので埋め尽くされているように見えますが、強力なアトモスフィア(空気)で満たされ、観客の心を離さず、舞台が終わった後までも続くことがあります。 アトモスフィアは、特別なものではなく、どこの場所にもあるものです。騒々しい通りの雰囲気、静かな家の中の雰囲気、図書館の雰囲気、病院の雰囲気、酒場の雰囲気……季節や時間帯によっても変化します。 アトモスフィアは、演技に強烈な影響を与えます。動きや、喋り、振る舞い、思考や感情にまで無意識に影響を与えるのです。そして、感染するように、強烈な影響は広がるのです。 アトモスフィアは客観的な感覚であり、個人的な主観的感覚とは区別します。通りで大惨事があったときの、客観的な感覚は、恐怖や不安だったりしますが、個人的には異なってきます。泣き叫ぶ人もいれば、進んで人命救助をしようとする人もいるでしょう。また、警官や医者など職業によっても、振る舞いや心情は異なるでしょう。 それから、寺院のような静かで時が止まったようなアトモスフィアの空間に、賑やかな観光客が入ってきたら、がらっと雰囲気が変わるように、アトモスフィアは変化します。優勢的なアトモスフィアに支配されることになります。 |
ここでは、マイケル・チェーホフの著書「To the Actor(最新版)」「On the technique of Acting」の内容をFranc Chamberlain著「Michael Chekhov」の記述を踏まえてまとめていきます。