別役慎司のアクティングスクールは
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シアターゲームティーチャーやインプロティーチャーになるための養成講座もあります。

一般社団法人日本グローバル演劇教育協会(GLODEA)

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スタニスラフスキー
Stanislvski's [system]
システムの実践・トレーニング

システムの実践・トレーニング

1.Release and Relaxation

柔軟な身体はとても重要である。固い身体では表現の可能性も狭い。
どうすれば、身体をコントロールすることができるのか?
どうすれば、リラックスできるのか?

@Awareness of Tension
   緊張の問題として厄介なのは、ほとんどの緊張が我々の気づいていないものであるということ。
AThe Monitor
  ・The External Monitor……他人の目から緊張の部分を発見
  ・The Internal Monitor……自分自身が緊張の部分を発見
BBalance of the Centre of Gravity
   演技の流れにおいて、体重移動というものは自然に無理なく行われるべきである。
   バランス感覚を維持する上で大切なことは、重心を知ることである。

2.Muscles and Combined Action

@The Right Muscles
   日常の様々な動作の中、どの筋肉がどのように使われているか。
   実際に物を持ったとき、イメージで物を持ったように見せるときの違い。
   同じ筋肉・同じエネルギーが使われているか。

ACombined Action
   他の人たちの動きに合わせ、同調する方法を学ばなければならない。  

3.Intension and Justification + Actions

行動や姿勢は、意図に基づく創造によって正当化されなければならない。
演技には全て理由が存在する。

@Organic Actions
   一日の生活を眺めてみてもわかるように、行動にはある程度流れと法則性がある。
  e.g 朝起きて顔を洗い歯を磨く→着替えて駅へ→電車に乗って職場へ→昼には弁当
      →仕事が終わったあとカラオケへ→晩御飯を食べる→帰宅→風呂→TVを見る
   作品の世界にも当然、Organic Actionsはある。

ATime,Place and Circumstance
   行動は「時」「所」「状況」に左右にされる。

BPsychological Aspects
   行動と感情は表裏一体。心理面で設定を加えることで、行動の持つ意味は遥かに変わる。

・シンプルな行動(ト書きに書かれているのはこのような形である)をそのまま演じたのでは、浅く無味乾燥
  なものになってしまう。脚本の中で、書かれていずとも、時・場所・状 況・目的・性格・癖など複雑な要素
  に目を向けて、このシンプルな行動をより深く意味の あるものにしなくてはならない。
・同じ行動でも、このように全く違う要素が添付され、異なった演技となる。これが脚本のサブテクストの部
  分であり、俳優が役作りの時に重要なプロセスとなる。
・演技は文字に書かれた通りの一直線なものではなく、非常にたくさんの要素が絡み合った広く深いものである。
・演技の可能性を俳優は知らなければならない。
・演技の可能性を開拓する楽しさを実感してほしい。
・あらゆる視点から、劇世界や登場人物を分析することが必要である。また、それらを行うことが演劇の醍
  醐味でもある。

4.Focus and Concentration

舞台上で、演技者の焦点は常に変化をしている。その焦点を意識するだけで演技は遙かに
広がる。自分自身や観客にしか焦点のいっていない演技がいかに低レベルなものか。
焦点を知り、焦点を活用できなければならない。

@Five senses
  視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚
  この五感を意識することで、演技はリアルになる。また、演技者自身がうわべだけでない
  真実の感覚を手にすることができる。
  五感は行動をリアルにするだけでなく、感情もリアルにする。普段の生活・人生経験など
  から五感の記憶を呼び覚ますこともまた重要である。
  →Emotion Memory(感情の記憶)

AGroup Focus
  アンサンブルは、自分と全体にフォーカスを合わせる。
  他者との見えないコミュニケーション。

BMulti−level Focus
  洗い物をしながら会話をしたり、同時に全く違うものに焦点をあてなければならないとき
  がある。単調な動き、習慣的な動きならば混乱は少ない。しかし、ドラえもんの絵を描き 
  ながら、最近あったイヤなことを語るというような場合ではその難しさを感じるだろう。
  焦点をあてるものが合い離れていればいるほど、同時にこなすのは難しい。
  心と身体、感情と行動は表裏一体である。逆に言えば、どちらかいっぽうだけの演劇
  (感情を吐き出せばいい、もしくは身体を使って現せばいい)というのは低レベルな
  ものである。

CCircles of Attention
  このCircles of Attention(注意の圏)は、大中小三つのレベルに分けると
  分かりやすい。
小……一番間近のフォーカス。
    自分自身、小道具、目の前のものなど、一番狭いが強いフォーカス。    
中……中間的な位置のフォーカス。
    対話者など自分を取り囲む領域の中のもの。視線を送ればすぐに感知できる。
大……一番遠いフォーカス。
    周囲の景色、遠いところにいる人物、観客など。遠いためにはっきりと把握でき
    ないが、広く全体的に感知できる。

 演技のとき、この三つのレベルの焦点に気をつける。というのも、舞台上では様々な
  フォーカスが交錯し、即座に移り変わる。焦点がひとつに絞られたままでは、演技は
  非常に狭く不自由なものになってしまう。
  特に緊張しているときフォーカスは狭く一定になる。
  大中小、一つのレベルのフォーカスにあるときもあれば、複数同時にフォーカスを当て ているときもある。
  演技者が小のフォーカスで演技をしているとき、観客のフォーカスも一点に集中する。
  演技者が大のフォーカスで演技をしているとき、観客は舞台全体を広くイメージできる。
  この原理を有効に生かし、バランスよくフォーカスを移す。これは演出家にとっても
  考えなければならない大事なことである。

Object of Attention……集中している対象。
  当然だが、集中する(フォーカスを当てる)のには理由がある。その理由は、感情を
  伴う。すなわち、ただ集中すればいいというわけではない。
  集中するとき、その行為が正当化できるか。
  (例えば、ペンを取るという行為もただ取るのではなく、電話番号をメモしたいという
   ように理由があって取る。理由があってこそ、行為は演技となる。)

5.Imagination

想像力は、芸術のの命の源である。当然、演劇においても非常に重要な要素である。
常日頃から、想像力を鍛えるべきだ。それには、感性を磨き視野を広げること。また、
芝居づくりにおいて、どれだけ想像していいのかというのも理解しておくべきだ。

@Before Time
  脚本に書かれていることのみが劇世界ではない。俳優は誰しも脚本に書かれていない
  ことを想像しなければならない。(→Subtext)
  Before Timeは、例えばある登場人物が登場する以前のことを想像したり、脚本
  に書かれている前の部分を埋めるものである。酔って登場するならば、どこで誰と飲ん
  で、どういう気分だったのか。なぜ飲みに行ったのかなどを想像する。

AAfter Time
  退場した後、なにをするのかなどを考えるのがAfter Time
  こうして、脚本に書かれていない空白の部分を埋めることでより人物が自分のものに
  なるし、その上演技もリアリティーを増し、広く深いものになる。

BSubtext
  サブテクストは、このように脚本に書かれていない氷山の一角のその下である。サブ
  テクストを開拓することはきわめて重要で必須である。これによって、役作りはより確
  かでオリジナリティーあふれるものになり、演技はリアリティーを増し、劇世界は広がる。
  サブテクストを開拓できるということは、それだけ戯曲が読めるということだが、日本人
  はそのように教えられていないから、不得手である。だから戯曲の読解力がない。

CInner Monologue
  口に出した言葉が全てではない。日常生活なら、おそらく口に出さない言葉の方が
  多いだろう。登場人物が劇世界に存在し、彼らの生活があるのなら必然とInner
  Monologueはある。台詞の出番を待っていては、その間空白で死んだの演技になる。
  常に役と行動・感情を維持しなければならない。
  (→Through−ActionThrough−Emotion

DMental Images
  映像としてイメージができているか。イメージは行動を広げ感情を呼び起こす。
  頭の中では、登場人物の映画が展開されている。

EMagic IF
  Magic IFは、「自分がこの状況に置かれたなら、どうするだろうか?」と、仮定して考えてみること。
  自らの経験を利用する場合もある。その役を演じる不安、そのシーンに身を置けない不安が
  解決できる場合がある。

6.Emotion Memory

自らの経験は、演技に生かされる。劇作家によって書かれた脚本上の人物の体験は、そのまま
では舞台上に生きない。マリオネットではなく、一人の人間として存在するためには、役作りに
おいて自分の経験を利用しなければならない。また、利用することで演技は上っ面のみでは
ない、真実のものになる。

・脳が記憶している経験……五感の記憶。(夏の暑さや、潮の匂い、雪の感触など)
              人生経験の記憶。(失恋体験・憤慨したときの記憶など)
・身体が記憶している経験……物の手触り、走るときの身体の動き、叩かれたときの反応など

記憶させることも練習になる。(→MusclesFive Senses
24時間365日、生きている限り俳優修行。

7.Mind and Body

・喜怒哀楽などの精神状態は、表情や仕草となって表面に現れるもの。
   喜怒哀楽とは? 驚きや痛みなどは?
・状況は精神状態に影響を与える。
   例えば、休暇でリラックスしている状況のとき、急に会社から呼び出されたとすると
   その精神状態は完全に変わる。
   登場人物が疲れて登場するシーンがあるとすると、そのBefore Timeに、疲れる
   状況に陥れるなにかがあったということ。こういうとき、疲れた演技をどうすればいい
   のかと考えるよりも状況を想像する方がいい。
   また、一人と二人とでは違う。相手が好きな人嫌いな人とでも変化がある。
   プライベートのときと会社などのオフィシャルなときともまるきり違いが出る。
・外界からの影響によって、過去の記憶を呼び覚ましたりする。
   旅先で懐かしいと感じたことなど
・ムードや精神状態は、行動に影響する。
   照明効果、音響・音楽効果、沈黙、ノイズ、昼と夜、見慣れた景色、外国の景色など 

8.Communication

コミュニケーションとはなんだろうか?
相手がいて成り立つ。相手になにかを伝える。気持ち、情報など。
コミュニケーションの媒体は? 言葉、ジェスチャー、目。

@Verbal Communication
  言葉だけでコミュニケーションをしてみる。
AGestural Communication
  言葉を使わずジェスチャーだけでコミュニケーションしてみる。
BMental Communication
  目があったときに、一瞬で伝える意志疎通→Radiation

必要以上に冗舌な説明、陳腐な言い回し、過剰なアクション、きまりきったジェスチャー
は、演劇では嫌われる。これらは排除しなければならない。ただ、稽古としてなら役に
立つケースもある。

9.Tempo−Rhythm

Tempo……速度  Rhythm……調子・律動

テンポとリズムを変化させると、精神状態・行動、さらに状況までもが変化する。
逆に言うと、状況・精神状態、行動にはそれなりのテンポとリズムがある。
さらに脈拍や呼吸にも影響がある。
作品の中でも登場人物それぞれにテンポとリズムがある。

10.Verbal Action

Punctuation
Pauses
Stress    など

各言語それぞれ特徴があるので、システムの中では取り扱わず、別で練習するべき。

11.Characterisation

同じ登場人物でも役者によってそれぞれ役作りは違う。すなわちそれは、役作りの中心に
あるのはその人自身であるから。しかし、自分自身を出発点に役作りを始めゴールまで自
分自身からしか抽出しないのでは、失敗といえる。劇作家の描く登場人物も千差万別、
特徴を生かして、実在感のある人間に創り上げるには工夫がいる。

・大きな枠組み
外面上の特徴……年寄り、肥満の人、酔っぱらった人、背の高い人の特徴は?
職業の特徴……軍人、サラリーマン、バレエダンサー、高校生の特徴は?

その他、場所、状況、服装、仕草、話しぶりなどにどんな違いがあるか?

12.Justification

単に誰かの外面的な特徴をコピーしただけでは、演技とはいえない。人物の特徴、
置かれた状況、全ての行動・振る舞いには理由がある。それらを正当化せよ。

例えば、骨折しているのならどこでどのように骨を折ったのか、そのとき、どのような
反応をしたのか、周囲の人々はどんな反応をしたのか。そうなったのは誰のミスなのか。
今、どういう心境なのか。仕事や生活にはどのような影響が出るか。などを考える。

観察した人物の、限られた特徴からその人物を正当化するのもいい練習である。

13.Total Action

戯曲の根底にあるテーマ、劇世界とドラマの流れ、そしてゴール。
全ての登場人物の行動には一貫性と連続とした流れ、そして目指すゴールがある。
このゴールに向けた意志をSuper Objective(Super Task)という。日本では
「超目標」「超課題」と訳されているが、このSuper Objectiveは俳優の演技に
非常に有効である。
行動の一貫性とその流れ、これをThrough−Actionという。
ちなみに感情の一貫性とその流れはThrough−Emotion。この二つは表裏一体と
なって相互に影響している。
そしてこの二つの流れの先にあるものが、Super−Objectiveである。

例えば、ハムレット劇中もっとも大きなSuper Objectiveは、父の復讐を遂げたい
ということであるが、そのなかでも、母の目を覚ましてやりたいというように幾つもの目標
がシーンの中に存在する。
これらは、俳優の演技を強い力で引っ張り、常に行動と感情に意味を持たせ、嘘や空白
のない真実の演技に近づけてくれる。

劇の中は、人物と人物とが対峙し展開する。そのためThrough−Actionの一方には
Counter−Through−Actionというものがある。
例えば、ヒーローと悪者のように。行動は人物間でも相互作用する。

14.Performance Mode

ここまでで、`system’の全ての要素を学んだ。
全ての基礎が強固に築かれた。演技を広く深く知ることができた。
もはや、間違った道にそれることはない。いい演技、いい演劇とはなにかを判断できる
「センス」も持った。これまでに学んだことを、しっかりと意識して励んでほしい。

さぁ、上演する準備ができた。創造する素地ができた。
これからはより実戦的に学んでもらいたい。

`system’の全ての要素は学んだが、`system’には続きがある。
訓練としての`system’を終了しただけである。

この先には舞台創造のための、より実戦的な`system’がある。
本当のスタニスラフスキーシステム、Method of Physical Actionの骨格に過ぎない。

システムをどのようにトレーニングの中に組み込んでいけばいいのか。

STONEψWINGSでは、右のようにテーマを決めて、エクササイズ中心で体得していってもらいます。

実際には右のテーマについて、様々なエクササイズを行っています。それについては割愛させていただきます。

Affection Memoryという言葉も聞かれますが、こちらはメソッドで使われる言葉ではないでしょうか。

Emotion Memoryは、感情を外に無制限に放出するのとは違います。

スタニスラフスキーは「System」という風に、固有名詞として使っていたのではありません。
だから、「system」と、記載しています。

国際的な演技スクール WIAS ウィアス