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一般社団法人日本グローバル演劇教育協会(GLODEA)

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デヴィッド・ジンダー
Body Voice Imagination
ボディー・ボイス・イマジネーション

【INDEX】
1.Introduction まず初めに
2.The Logic of Training 俳優訓練のロジック
3.Tragectories 弾道
4.Training into Writing トレーニングを書くということ
5.Technicalitites 専門的な注意

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1.Introduction まず初めに

 

 デヴィッド・ジンダーのメソッドは、俳優訓練に関するものですが、彼はこういうコンセプトを持っています。

システマティックな習得と技術の維持を通して、俳優という楽器と基本的な創造ツールを整備する

 この概念に基づき、ジンダーは本を書いているとき、三つのことがずっと中心に置かれていて、今でもそうだといっています。
@舞台という時間と空間のなかで展開されるクリエイティブ・モーメントへのあくなき魅力。
A身体・声・想像力が深く関わり、俳優から発せられるプレゼンスへの尽きない魅力。
Bマイケル・チェーホフの内容から受けるインスピレーションとガイダンス。
  ジンダーは、マイケル・チェーホフの影響を受けました。ワークショップで行っていること全て、ベースはマイケル・チェーホフと同じであるとまでいっています。彼は、チェーホフを簡潔に表すならば、「ジェスチャーはサイコロジー」「俳優は身体で想像する」だといいます。チェーホフは、演劇におけるサイコロジー(心理)は、ジェスチャーとムーヴメントであると考えます。徹底的なテキスト解釈でなくても、俳優は身体からその役を理解することが出来る。俳優の身体のムーヴメントと想像力の間には密接な関係があるのです。

「俳優は身体で想像する。内面のイメージに反応することなしに動いたり、演技したりすることはできない。イメージが大きく強くなるほど、声と身体は外面的に同調する」by マイケル・チェーホフ

デヴィッド・ジンダーのメソッドは、マイケル・チェーホフからスタートして、様々な素晴らしい俳優や演出家やトレーナーの影響があって、ここに形成されています。それられは広がり、今新しい俳優訓練として、我々に寄与するでしょう。

2.The Logic of Training  俳優訓練のロジック

「訓練されていない身体というのは、チューニングされていない楽器と同じだ。――真実の音色を奏でず、不調和で、ひどい、無意味な音が詰まった箱だ」by ピーター・ブルック

俳優の三つの基本ツールを紹介しましょう。
@声(voice)A身体(body)B想像力(imagination)
そして二つの基本技能はこれです。
@放出(radiation)A 創造的協調(creative cooperation)
 これらの要素は、システマティックなトレーニングの主題になります。これらは分離された要素ですが、「俳優訓練のロジック」の中で、このメカニズムを理解し、つなぎ合わせ、統合させ、創造的なプレゼンスを体現するところまで発展させていくのが狙いです。

3.Tragectories 弾道

T.Body→Voice→Imagination
 身体からスタートし、よく訓練された身体の確固たる基礎に基づく発声能力を経て、魅力的でとらえどころなく、複雑で難しい想像力に向かう。という方向性がいいでしょう。
 想像力というのは最もパワフルな俳優のツールですが、非常に複雑でとらえどころがないものです。ですから発展段階にもっていったほうがいいと思います。また発声に関しては、身体がよく鍛錬されていなければいけません。

「言葉でもなく、考えでもなく、身体から始めなければいけない。自由な身体には全ての生と死が宿る」by ピーター・ブルック

U.Physical→Physiclal/Vocal→Physical/Vocal/Verbal
 基本的な前提として、俳優訓練において出来るだけ声、言葉、テキストは避けた方がいいです。以下のような順番で発展させていくことが必要です。
 純粋に身体から、動作の中での身体が生み出す声の発見に至り、そして、言葉・言語・テキストという俳優の仕事をサポートする声と、よく訓練された身体が深くコネクトされた状態になる。
  よく訓練されているという自信があれば、高い表現力を持つ身体は、俳優のリズム、ペース、呼吸とコネクトした声を生み出します。 また、身体による表現というのは、言葉そのものより不確かですが、外に発する表現力は強く、マルチな解釈を許します。ジンダーは、自らの体験から、身体的(ノン・ヴァーバル)表現が深ければ深いほど、制御はできないが、最も表現力を強くし、また表現の解釈を許すぶん”安全”でもある。だから、俳優訓練のスタートポイントとして適していると考えました。
  これらの弾道(訓練の方向性)は、俳優に外に表現することの自信を徐々に持たせ、より自由に、クリエイティブにさせます。

V.the Abstract → the Concrete
  三つ目の弾道は、抽象から具象へということですが、要するに「創造の習慣」をつけるということが狙いです。「自由な創造性」を得ることが大事なことです。まずは、創造する自由さと喜びを感じることからエクササイズを構成し、自由な創造の習慣を身につけます。
  「俳優訓練のロジック」の中では、全てのエクササイズを、出来る限り自由な形式にしています。例えば、具体的な言葉や小道具を使ったものや、マイムや想像上の物体を使ったエクササイズの中での決まった動きというものはありません。無限の可能性と自由な即興性が大事なのです。

W.Improvisation Technique
  三つの主要な「カラー」があり、そのカラーに弾道は色づけられます。
@「一体(connectedness)」……ボディーとボイスとイマジネーションが一体となった放出。
A「繰り返し(repetition)
B「即興/創造(improvisation/creativity)
  即興性は、創造性を生み出すためのキーであり、真に創造的だと考えます。テキストを使わないトレーニングにおいて、即興は非常に大事な要素としてエクササイズの中に存在します。
  三十年以上の経験から、見えてきたことがあります。密接に関係する二つのことです。
@創造の過程は俳優自身の生活において非常に根幹となるものなので、自己を尊重するトレーニングでないとそのことを教えられない。
A才能や持って生まれた創造性というのは当てに出来ない。だからこそ訓練され、形付けられなければならない。それがクセになるまで。
  どうすればいいのかに関してはトリッキーな部分ですが、実際の所、スタニスラフスキーは、理解する一番いい方法として、名前を与えています。複雑で抽象的な、「テクニカル」な要素も、名前をつけてトレーニング理解しやすいのです。

4.Training into Writing トレーニングを書くということ

 トレーニングの本を書くというのは難しいことです。エクササイズのリストを書いていくだけでは、実際の立体的な様子までを伝えることは出来ません。また、新しいエクササイズや異なるバリエーションのエクササイズが常に生まれ、発達していきます。
  ストラクチャーのないエクササイズや、明確さに欠けるエクササイズというのは、無定形のものになる恐れがあります。ストラクチャーのないトレーニングの場合、全く自由であるという点は魅力的ですが、それなりの注意が必要になるでしょう。また、「素晴らしい体験」をもたらすこともできるでしょうが、職業的な技術・技能を磨くトレーニングと、サイコドラマなどとは区別しておかなければなりません。あらゆることを鑑みても、ストラクチャーが必要だという結論になります。そこで俳優訓練のロジックのなかで、ジンダーは、ストラクチャー的な要素や、エクササイズの関連性やプロセス、評価やサイドコーチングというものを盛り込んでいます。
  もう一つ、重要なことを考慮しておかなければいけません。トレーニングというのは、知識の経験が積み重なっていくものです。一つの段階からもう一つの段階に進むときにレイヤーがかぶさってゆきます。明確に輪郭付けられたストラクチャーは段階を踏んでゆくごとに記憶に残ります。
 しかしながらストラクチャーに盲目的に囚われてしまっては、教科書的になってしまいます。すべては、変化の素です。フレキシブルに扱っていきましょう。
 俳優訓練というのは、世界共通でシンクロしてる部分があります。俳優訓練に携わる国際的な会議にジンダーが参加したとき、そこにはスタニスラフスキーやメソッドなど色々なバリエーションの広がりやつながりがありました。しかし実に驚いたことに、自分がワークショップのために考案した内容と、全く同一のものを考案している別の人がいたのです。このことから、ジンダーはこういうことがあるのも当然だということと、同じ分野で、同じ概念で活動している人同士だと、同じ事を考えたりするものなんだということを学びました。

5.Technicalities 専門的な注意

Critiques:エクササイズ一つ一つのあと、また一連の流れのエクササイズのあと、また区切り点でのディスカッションは重要。ディスカッションのないエクササイズは価値がありません。
Evaluation:観客は常に100%正しいと考え、みんなが評価を聞き、等しい敬意で接するべきです。役者は経験を積むにつれ、全てのことから学ぶ能力を持ちます。役者は、多くの評価を聞いて、その中から重要視するもの、自分のためになるものを選べばいいのです。これにはかなりの成熟度と誠実さが必要になります。
Diaries:人間の記憶は不確かなものなので、役者はみな、日記をつけたり、メモをとるようにしたほうがいいでしょう。そうしてトレーニングのことを書き留めておくのです。
The Work Space:できれば広めの木製のダンスフロアが適しています。コンクリートやタイルのフロアは、例えリノリウムを敷いていても、長い期間になると膝や足首にダメージが蓄積されます。天井はやはり高めのほうが望ましいです。そして最も重要なことですが、鏡は必要ありません。もし、稽古場に鏡があっても、カーテンで隠すことが出来ればいいでしょう。鏡は逆効果になるだけです。鏡が役者を歪め、取り憑かせ、最悪の観客兼批評家にさせるのです。

Physical preparedness and stamina:トレーニングの間、絶好のコンディションであることがいいのはいうまでもありません。トレーニング前に、食べ過ぎたり、水分を摂りすぎたりしないように気をつけましょう。また適宜休憩時間を作る必要があります。
Transformation:例え外で派手な格好をしていても、稽古場にはいるときは、それなりの稽古着に着替えることです。
Working clothes:動きやすい服装に着替えてください。動きの制約になるもの、例えばジーンズなどはいけません。軽めの服装が望ましいです。
Bare foot:裸足は、いい面と悪い面があります。厚底のスニーカーはやめましょう。
Accoutrements:時計、指輪、ピアスなどは外しておくべきです。

*別役が、今世界で一番注目している現代のトレーナー、デヴィッド・ジンダーのメソッド。
世界の多くのトレーナーが、ベーシックなスタニスラフスキー由来のトレーニングに、インプロやゲームを取り入れています。
ぼくもその一人ですが、ジンダーもまたそういうスタイルを取るトレーナーです。
システマティックな習得と技術の維持を通して、俳優という楽器と基本的なツールを整備する

まったくもって的を射た、俳優訓練というものの概念です。俳優さんもトレーナーさんも「整備する」という意識をもってください。
クリエイティブ・モーメント(creative moment)とプレゼンス(presence)は、あえてカタカナ表記にしました。クリエイティブ・モーメントは創造的瞬間と訳せるでしょうが、プレゼンスは、適当な日本語がありません。俳優から発せられる、人を感動させたり注意を引きつけたりする見えない力のことです。この二つは、俳優訓練の現場ではよく使われる言葉です。注意すべき点は、どちらも目に見えない要素であり、欧米はこれを重視します。日本は目に見えるものばかりに囚われています。
放出(radiation)は、スタニスラフスキーやMチェーホフの用語でもありますが、俳優から発せられる創造的なエネルギーやオーラ、エクスプレッションです。
創造的協調(creative cooperation) は、アンサンブルともいえますが、広い意味での他者との協調です。
日本は直立不動で早口言葉を喋るという発声練習のイメージがありますが、全く異なることがわかります。
もっと「動的」「身体的」に捉えるべきなのでしょう。
ジンダーは「自由な創造性」というものをとても重要視しています。日本は全く逆で、「型にはめる」トレーニングがとても多いです。演出においても動きを決めたがる人がほとんど。
STONEψWINGSのCOMPANY TRAININGにおいても、スタニスラフスキーの用語について、演技技術を思い出すために便宜的なものとして教えています。
STONEψWINGS